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大阪高等裁判所 昭和31年(ネ)1076号 判決

控訴人 合名会社きも玉商店

被控訴人 大津税務署長

訴訟代理人 辻本勇 外二名

主文

本件控訴を棄却する。

訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取消す被控訴人が昭和二十八年十一月三十日附を似て控訴人に対し為したる昭和二十七年度法人税更正決定(所得金額二十七万千円法人税額十一万三千八百二十円過少申告加算税額三千六百円)は之を取消す訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め被控訴人代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方事実上の陳述は控訴代理人に於て被控訴人は大都市に於て常時十人の工員を使用し多数優秀な機械設備を有する工員一人の売上高を年八十六万円其の利益率を九パーセントを基礎として控訴人の売上高及利益率を推計しているけれども控訴人は他方都市に於て餠搗機による外工員二人配達員二名の家族個企業に過ぎないから之を同一に論ずることは経済の法則を無視した暴論であると述べた外いずれも原判決事実摘示と同一であるから玄に之を引用する。

証拠〈省略〉

理由

当裁判所は左記の通り補充する外原判決と同一の理由によつて被控訴人の為した本件法人税の更正決定は正当で当審に於ける控訴人の立証中右認定に反するものはたやすく措信し難いと認めるから茲に之を引用するそして控訴人は被控訴人に大都市に於ける機械力並工員を多数使用する企業と地方小都市に於ける機械力貧弱にして家族的小規模の企業とが同一の利益率を得るものとして控訴人の所得を推計するのは経済の法則を無視した暴論であると非難するけれども原判決が正当に認定した通り控訴人は日々の売上高及利益率を証明すべき伝票その他諸帳簿を備え信憑するに足る証拠を提出しないものであるから企業の実体調査により控訴人の所得を推計する外なく原審証人横山俊郎片岡俊夫根来正輝の各証言及原審に於ける控訴会社代表者三上静雄本人尋問の結果の一部を綜合すれば生菓子饅頭類の利益率は売上高九パーセント乃至一割でこの率は企業の大小、大都市と小都市によつて大差あるものでなく殊にその利益率は殆んど異なることなく優に原判決摘示事実を認め得べく之に反する原審並当審に於ける控訴人代表者三上静雄の供述は当裁判所の措信しないところで他に右認定を左右するに足る証拠はない即ち仮に店頭小売に付見台一台に並べる個数を四十個とするも原判決摘示の計算方法により店頭小売の売上金を計算し之に控訴人の申告による卸売の売上高三百五万三百五十円を合算しその約九%の利益とすれば既に被控訴人主張の二十七万千円を超えること明で更に当審証人川崎勘市の証言によれば正月用餠については通例つき賃を徴収すること明で昭和二十七年度に於て控訴人会社に正月用賃餠のもち米十一石五斗九升あつたことは当事者間に争のないところ控訴人は右もち米は顧客から個別の容器に入れて受取り之をつき上げた上全部を別々に引渡すから何等利得なしと主張するけれども右賃つきにより控訴人が全然利益を得ないということは到底考えられないところでこの点に関する原審並当審に於ける証人三国隆及横井弥一郎の各証言は信用し難く他に控訴人が賃搗の利益なくして顧客の依頼に応ずべき特段の事情を認むべき証拠はないから控訴人は之により若干の利益を得たものと推定すべく之に控訴人に於て争わぬ控訴会社代表者三上静夫の住民税立替により利益に計算すべき立替利息千四百二十二万円乃至千七百十七円を加算するときは被控訴人の為した更正決定は何等不当とは認められない。

よつて本件控訴を理由なしとし之を棄却すべく民事訴訟法第三百八十四条第八十九条により主文の通りの判決する。

(裁判官 藤城虎雄 坂口公男 井関照夫)

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